慢性肩こりの「ミッシングリンク」:大胸筋と胸肋関節の機能解剖学から紐解く根本改善への道 【整体院oasis 木更津】

はじめに

「マッサージで肩を揉んでもらっても、その場しのぎで終わってしまう」 「肩甲骨はがしを試したが、すぐに肩が重くなる」 こうした悩みを抱える患者様は後を絶ちません。なぜ背中をケアしても肩こりは治らないのでしょうか?

その答えは、痛みの出ている「背中」ではなく、その裏側にある**「胸郭(きょうかく)」の前面**に隠されています。今回は、解剖学的視点から大胸筋と「胸肋関節(きょうろくかんせつ)」の関連性を紐解き、なぜここが肩こり治療の最重要ポイントなのかを医学的根拠に基づいて解説します。

1. 現代病「姿勢性後弯」と大胸筋の生理学的変化

現代人の多くは、デスクワークやスマートフォンの長時間利用により、頭部が前方に突出し、肩が内側に入る「巻き肩(円背)」の状態にあります。この姿勢が定着すると、胸部の中心にある大胸筋には以下の生理的変化が起こります。

  • 筋の短縮固定: 長時間の収縮により、筋膜の滑走性が低下し、物理的に筋肉が短くなります。

  • 相反抑制の不全: 生理学的な法則として、前面の大胸筋が過剰に緊張すると、その対抗筋である背面の菱形筋や僧帽筋下部には「抑制」がかかり、筋力が発揮できなくなります。

つまり、「胸が硬いから、背中が強制的に脱力させられ、重力に負けて肩が凝る」というメカニズムです。

2. 深層の原因:胸肋関節(きょうろくかんせつ)のバイオメカニクス

大胸筋のストレッチだけでは不十分な理由、それが胸肋関節の可動域制限です。

胸肋関節とは?

胸の中央にある「胸骨」と、左右から伸びる「肋骨」をつなぐ関節です。呼吸のたびに、あるいは腕を動かすたびに、この関節は数ミリ単位で微細に動いています。

運動学的なつながり

大胸筋の起始部は胸骨と第1〜6肋軟骨に広く付着しています。大胸筋が硬化すると、この胸肋関節を「固め打ち」にしてしまいます。

  • 論文的知見: 肩甲帯の運動異常(Scapular Dyskinesis)に関する研究では、肩甲骨の動きは単体で完結せず、胸郭(肋骨・胸骨)の拡張性が必須条件であると指摘されています。

  • 胸肋関節が動かないと、腕を上げる際に肩甲骨が十分な上方回旋を行えず、結果として肩関節周囲のインピンジメントや、肩上部の筋肉(僧帽筋上部)の過剰な代償動作を招きます。

 

3. 呼吸・自律神経系への影響(生理学的な視点)

胸肋関節の動きの悪さは、単なる筋骨格系の問題に留まりません。

胸郭の前面が固まると、横隔膜を主役とした「腹式呼吸」や、肋骨を広げる「胸式呼吸」が阻害されます。すると体は、首の筋肉(斜角筋や胸鎖乳突筋)を無理やり使って呼吸をしようとする**「努力性呼吸」**に切り替わります。 これらの筋肉は副神経や頸神経によって支配されており、常に緊張状態にあることで交感神経を優位にし、全身の血流不全やさらなる肩こりの悪化という負のスパイラルを引き起こします。

 

4. 根本改善のためのアプローチ:3つのステップ

当院では、単なる揉みほぐしではなく、以下のステップで「胸郭の解放」を行います。

① 大胸筋の筋膜リリースとモビライゼーション

まずは短縮した大胸筋を緩めます。しかし、表面的なマッサージではなく、肋骨一本一本から筋肉を剥がすような専門的な手技が必要です。これにより、胸肋関節が動く「余白」を作ります。

② 胸肋関節の可動性回復

固まった胸骨と肋骨のつなぎ目に対し、呼吸を併用した手技を行います。患者様自身の吸気(吸う息)を利用して、内側から関節を押し広げる調整を加えます。

③ セルフケア:3Dチェスト・ストレッチ

自宅でできるケアとして、単に腕を後ろに引くだけのストレッチではなく、**「胸骨を天井に向ける」**意識を取り入れた3次元的なストレッチを推奨しています。

ポイント: 肘を固定し、息を吸いながら胸の中央を前に突き出すことで、大胸筋の起始部(胸肋関節付近)に最も負荷がかかるように行います。

おわりに

肩こりは、体が出している「前面の詰まり」のサインです。 背中をいくら叩いても、前面の「つっかえ棒(大胸筋と固まった胸肋関節)」を取り除かない限り、肩甲骨は本来の自由を取り戻せません。

解剖学的・生理学的な根拠に基づいたアプローチで、その場しのぎではない「呼吸が深くなる体」を一緒に目指しましょう。長年の肩こりでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

その他、肩こりに関するブログもご参照ください!

https://oasis-bodyslinkmind.com/blog/肩こり

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ABOUT US
金子 隆一
高校卒業後に君津市にある千葉医療福祉専門学校へ入学し、国家資格である理学療法士の免許を取得。卒業後は、木更津市にある君津中央病院へ入職し、整形外科・脳外科・神経内科など様々な診療科目におけるリハビリテーションを学びながら2年間勤務。その後、富津市にある加藤大介クリニックに開業から約20年間勤務し約50000万人の方を施術し、それと同時にスポーツトレーナーとして高校野球部をサポート。昨年2024年4月に木更津市に整体oasisを開業。整体業のほかに地域のスポーツ団体にスポーツ障害の予防を指導し、地域で活動中。