成長期の膝の痛み オスグッド病と「ハムストリングス筋力」の隠れた関係について解説【整体院oasis 木更津】

成長期の膝の痛みでお悩みの方へ

オスグッド・シュラッター病(以下OSD)といえば、「太もも前側(大腿四頭筋)の使いすぎ」や「ストレッチ不足」が原因として有名です。しかし、近年のスポーツ医学やバイオメカニクスの研究では、反対側に位置する「ハムストリングスの筋力特性」が、発症の鍵を握っていることが明らかになってきました。

今回は、医学的な論文の視点を交えながら、知られざるハムストリングスの筋力面について解説します。

1. 伸筋と屈筋のアンバランス:H/Q比の重要性

医学的に筋肉のバランスを評価する指標に**「H/Q比(Hamstring/Quadriceps ratio)」**があります。これは、膝を曲げる筋肉(ハムストリングス)と伸ばす筋肉(大腿四頭筋)の筋力比率のことです。

OSDを発症する選手の多くは、このバランスが**「大腿四頭筋優位(Quad-dominant)」**に偏っていることが指摘されています。

  • 過剰な牽引力の発生: 大腿四頭筋の出力がハムストリングスに対して強すぎると、膝を伸ばすたびに脛骨粗面(スネの出っ張り)に対して、設計限界を超えた強烈な牽引力が加わります。

  • ブレーキ機能の喪失: ハムストリングスには、膝を伸ばす動作にブレーキをかけ、関節を安定させる「制動筋」としての役割があります。ハムストリングスの筋力が不十分だと、このブレーキが効かず、大腿四頭筋が「全力でスネを引っ張り続けてしまう」状態に陥るのです。

2. 「遠心性収縮(エキセントリック)」という筋力特性

筋力には「縮みながら力を出す(求心性)」と「伸ばされながら力を出す(遠心性)」の2種類があります。OSDにおいて特に重要なのが、後者のハムストリングスの遠心性収縮力です。

例えば、ダッシュの停止時やジャンプの着地時、膝が急激に伸びる力を抑えるために、ハムストリングスは引き伸ばされながら強い力を発揮しなければなりません。

論文の知見: 複数のバイオメカニクス研究によれば、下肢の慢性疾患を持つ若年アスリートは、この遠心性収縮時の筋出力が低下している傾向にあります。ハムストリングスがこの負荷に耐えられないと、その衝撃はすべて膝蓋腱(膝の皿の下の腱)を介して、成長期の柔らかい骨へとダイレクトに伝わってしまいます。

3. 「相互抑制」のメカニズムと筋出力

人間の体には、一方の筋肉が収縮すると、反対側の筋肉がリラックスするという「相互抑制」という仕組みがあります。

  • ハムストリングスが弱く硬い場合: 脳は「これ以上伸びると危険だ」と判断し、ハムストリングスに常に緊張を命じます。

  • 悪循環の発現: ハムストリングスが緊張し続けると、今度は大腿四頭筋がその抵抗に打ち勝つために、通常よりもさらに強い力(筋出力)を出そうとします。

つまり、ハムストリングスの筋力不足や機能不全が、結果として「大腿四頭筋の暴走」を招き、膝への負担を倍増させているのです。

4. 股関節の筋力との連動(Closed Kinetic Chain)

ハムストリングスは膝だけでなく、股関節を伸ばす(股関節伸展)役割も担う「二関節筋」です。

OSDに悩む選手の中には、「股関節伸展筋(ハムストリングスおよび大殿筋)の筋力低下」が原因で、動作の主役を膝関節(大腿四頭筋)に頼りすぎているケースが多々見受けられます(膝関節優位の動作パターン)。

股関節周りの筋力が強化され、ハムストリングスが正しく駆動し始めると、歩行や走行時の衝撃が分散され、膝への負担は劇的に軽減されることがリハビリテーションの現場でも実証されています。

膝だけを見ないアプローチを

ブログの読者の皆さんに伝えたいのは、「痛いのは膝だが、原因は膝の裏(ハムストリングス)にあるかもしれない」ということです。

◯柔軟性: ハムストリングスのタイトネスを解消し、大腿四頭筋への抵抗を減らす。

◯筋力強化: ハムストリングスの遠心性収縮力を高め、膝のブレーキ機能を回復させる。

◯動作改善: 股関節を主役とした動きを覚え、大腿四頭筋への依存度を下げる。

この3点が揃うことで、再発を繰り返さない強い体を作ることができます。「休んで治す」から「バランスを整えて治す」へ。成長期のスポーツライフを支えるために、ぜひハムストリングスの筋力に注目してみてください。

もも裏チェックリスト

オスグッドの痛みがある人も、今はまだない人も、まずは自分の「もも裏(ハムストリングス)」の状態を確認してみましょう。

以下の項目で当てはまるものを数えてください。

【柔軟性チェック:硬さの確認】

  1. 仰向けでの脚上げ(SLRテスト)

    • 仰向けに寝て、片脚を膝を伸ばしたまま上げます。床から70度(垂直の少し手前)まで上がりますか?上がらなければチェック。

  2. 長座体前屈

    • 床に座って足を伸ばしたとき、指先が足のつま先に届きますか?届かなければチェック。

  3. ジャックナイフ・チェック

    • しゃがんで足首を掴んだまま、膝を完全に伸ばせますか?(胸と太ももが離れてしまう場合はNG)離れたらチェック。

【筋力・バランスチェック:出力の確認】

  1. 片脚ヒップリフト

    • 仰向けで片脚を浮かせ、もう片方の脚だけでお尻を高く上げられますか?10秒キープできず、もも裏が「つりそう」になったらチェック。

  2. 着地音の確認

    • その場で軽くジャンプして着地したとき、「ドシン!」と大きな音がしますか?(膝のクッション、つまりハムストリングスのブレーキが効いていない証拠です)音が大きければチェック。

  3. 階段の昇り降り

    • 階段を降りる時、膝のすぐ上が「ガクガク」したり、膝のお皿の下に響く感じがしますか?あればチェック。

【動作の癖チェック:使い方の確認】

  1. 靴の減り方

    • 運動靴のかかとが極端に外側だけ、あるいは内側だけ減っていませんか?(足首や膝のねじれは、ハムストリングスの機能を低下させます)偏りがあればチェック。

  2. お辞儀のフォーム

    • 立ったままお辞儀をしたとき、膝がすぐに曲がってしまいますか?(もも裏が硬いと、股関節ではなく膝を曲げて逃がそうとします)膝が曲がったらチェック。

【判定結果】あなたのリスクはどのくらい?

  • チェック 0〜1個:【安心】 ハムストリングスが柔軟で、機能しています。現在のケアを継続しましょう。

  • チェック 2〜4個:【注意:オスグッド予備軍】 もも裏の柔軟性が低下し、大腿四頭筋への負担が増え始めています。ステップ1の「ジャックナイフ・ストレッチ」を重点的に行いましょう。

  • チェック 5個以上:【危険:悪化リスク大】 ハムストリングスが「ブレーキ」として全く機能していません。膝にかかる負担が限界に近い状態です。筋力トレーニング(ステップ2、3)を取り入れ、筋肉のバランスを根本から整える必要があります。

オスグッド克服のためのハムストリングス・トレーニング

オスグッドの回復と再発防止には、ハムストリングスの「柔軟性」「出力」「連動性」の3つを同時に高める必要があります。痛みの状態に合わせて、以下の順序で行うのが効果的です。

ステップ1:ジャックナイフ・ストレッチ(柔軟性の確保)

まずは、大腿四頭筋の抵抗勢力となっている「ハムストリングスの硬さ」を取り除きます。一般的な前屈よりも、膝への負担を抑えつつ効率よく伸ばせます。

①:しゃがんだ状態で、両手で自分の足首をしっかり掴みます。

②:胸と太ももをぴったりとくっつけたまま、ゆっくりとお尻を高く上げていきます。

③:ハムストリングスが伸びているのを感じる場所で5秒キープ。

④:これを5〜10回繰り返します。

ポイント: 胸と太ももを引き離さないことが重要です。これにより、腰を痛めずハムストリングスだけをピンポイントで狙えます。

ステップ2:ヒップリフト(求心性・遠心性筋力の強化)

膝を曲げた状態で、お尻ともも裏の筋肉を活性化させます。「お尻を上げる時」だけでなく「下ろす時」を意識することで、ブレーキ筋としての機能を高めます。

①:仰向けに寝て、両膝を90度に曲げます。

②:足の裏で地面をしっかり押し、お尻をゆっくりと持ち上げます。

③:肩から膝が一直線になったところで1秒静止。

④:ここが重要: 4秒ほどかけて、ゆっくりとお尻を地面に下ろしていきます(遠心性収縮)。

⑤:15回 × 3セットを目安に行います。

医学的メリット: お尻(大殿筋)とハムストリングスが協調して働くことで、歩行や走行時に大腿四頭筋が「一人勝ち」するのを防ぐバランスが養われます。

ステップ3:ノルディック・ハムストリングス(超強力なブレーキ力)

これは多くのスポーツ医学論文で、下肢の怪我予防に最も効果的とされているトレーニングの簡易版です。非常に負荷が高いため、痛みが落ち着いてきた段階で行います。

①:膝立ちになり、誰かに足首を固定してもらう(または家具の隙間に足をかける)。

②:体を真っ直ぐに保ったまま、ゆっくりと上半身を前に倒していきます。

③:ハムストリングスに強い力がかかっているのを感じながら、耐えきれなくなるところまで粘ります。

④:限界がきたら手をついて元の位置に戻ります。

⑤:5回 × 2セットから始めます。

プロの視点: この運動はハムストリングスの「遠心性筋力」を劇的に向上させます。これにより、ダッシュの急停止や着地時にスネの骨にかかる衝撃を、筋肉が身代わりとなって吸収してくれるようになります。

トレーニングの注意点

トレーニングを導入する際、以下の2点を必ず読者に伝えてください。

1. 「痛み」をセンサーにする

ハムストリングスのトレーニング中に、膝のオスグッドの部分(スネの出っ張り)に強い痛みが出る場合は、負荷が強すぎるか、フォームが崩れて大腿四頭筋に力が入っています。**「もも裏を使っている感覚」**が主役であることを意識させることが大切です。

2. 股関節を動かす意識を持つ

オスグッドの選手は「膝主導」の動きが癖になっています。どのメニューでも「股関節(足の付け根)から動かす」イメージを持つことで、ハムストリングスが正しく発火しやすくなります。

もも裏チェックリスト

オスグッドの痛みがある人も、今はまだない人も、まずは自分の「もも裏(ハムストリングス)」の状態を確認してみましょう。以下の項目で当てはまるものを数えてください。

【柔軟性チェック:硬さの確認】

  1. 仰向けでの脚上げ(SLRテスト)

    • 仰向けに寝て、片脚を膝を伸ばしたまま上げます。床から70度(垂直の少し手前)まで上がりますか?上がらなければチェック。

  2. 長座体前屈

    • 床に座って足を伸ばしたとき、指先が足のつま先に届きますか?届かなければチェック。

  3. ジャックナイフ・チェック

    • しゃがんで足首を掴んだまま、膝を完全に伸ばせますか?(胸と太ももが離れてしまう場合はNG)離れたらチェック。

【筋力・バランスチェック:出力の確認】

  1. 片脚ヒップリフト

    • 仰向けで片脚を浮かせ、もう片方の脚だけでお尻を高く上げられますか?10秒キープできず、もも裏が「つりそう」になったらチェック。

  2. 着地音の確認

    • その場で軽くジャンプして着地したとき、「ドシン!」と大きな音がしますか?(膝のクッション、つまりハムストリングスのブレーキが効いていない証拠です)音が大きければチェック。

  3. 階段の昇り降り

    • 階段を降りる時、膝のすぐ上が「ガクガク」したり、膝のお皿の下に響く感じがしますか?あればチェック。

【動作の癖チェック:使い方の確認】

  1. 靴の減り方

    • 運動靴のかかとが極端に外側だけ、あるいは内側だけ減っていませんか?(足首や膝のねじれは、ハムストリングスの機能を低下させます)偏りがあればチェック。

  2. お辞儀のフォーム

    • 立ったままお辞儀をしたとき、膝がすぐに曲がってしまいますか?(もも裏が硬いと、股関節ではなく膝を曲げて逃がそうとします)膝が曲がったらチェック。


【判定結果】あなたのリスクはどのくらい?

  • チェック 0〜1個:【安心】 ハムストリングスが柔軟で、機能しています。現在のケアを継続しましょう。

  • チェック 2〜4個:【注意:オスグッド予備軍】 もも裏の柔軟性が低下し、大腿四頭筋への負担が増え始めています。ステップ1の「ジャックナイフ・ストレッチ」を重点的に行いましょう。

  • チェック 5個以上:【危険:悪化リスク大】 ハムストリングスが「ブレーキ」として全く機能していません。膝にかかる負担が限界に近い状態です。筋力トレーニング(ステップ2、3)を取り入れ、筋肉のバランスを根本から整える必要があります。

まとめ

オスグッドは「成長痛だから仕方ない」と諦めるものではありません。ハムストリングスを鍛え、膝周りの力のバランスを整えることは、痛みの解消だけでなく、将来的なアスリートとしてのパフォーマンスアップにも直結します。

まずは毎日のストレッチと簡単なヒップリフトから、自分の体と向き合ってみましょう。

その他、ブログもご参照ください

https://oasis-bodyslinkmind.com/blog/オスグッド・シュラッター病

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ABOUT US
金子 隆一
高校卒業後に君津市にある千葉医療福祉専門学校へ入学し、国家資格である理学療法士の免許を取得。卒業後は、木更津市にある君津中央病院へ入職し、整形外科・脳外科・神経内科など様々な診療科目におけるリハビリテーションを学びながら2年間勤務。その後、富津市にある加藤大介クリニックに開業から約20年間勤務し約50000万人の方を施術し、それと同時にスポーツトレーナーとして高校野球部をサポート。昨年2024年4月に木更津市に整体oasisを開業。整体業のほかに地域のスポーツ団体にスポーツ障害の予防を指導し、地域で活動中。